あの夏の夜、岡崎に雨が降っていた。
ただの雨じゃなかった。僕を孝之さんのバーへ導く雨だった。
寛い笑顔で、温かい優しさで、彼は僕を招き入れてくれた。僕の不自然な日本語に笑いながら話しかけてくれた。そこは安心できる場所となった。
毎回、阪神タイガースの試合を見ながら、ルールなども教えてくれた。楽しい時間をくれた。
初めは、言葉の30%しか理解できなかった。でも、心の100%が彼の優しさを受け取っていた。そして、本当のつながりが生まれた。
憂さの重さを抱えた僕は、このバーに入って、優しさを知っている孝之さんの笑顔を見ると、その憂さが葉のように一斉に散っていった。
孝之さんがいたから、あのバーは「ただのバー」にならなかった。彼がいたから、そこは「帰る場所」になった。
雨粒を見るたびに、あの優しい岡崎を思い出す。

