岡崎との夜

岡崎で過ごした僕の夜は、長くなかった。
40夜。夜毎、岡崎は僕に接吻をくれた。
頭に、
目に、
頬に。

うつ病に悩んでいたとき、岡崎は僕に寄り添ってくれた。
真夜中にも岡崎は眠れない僕のために子守歌を歌ってくれた。

人々は岡崎の「名前」を口にする。
僕は岡崎の「手触り」を覚えている。
あの街で僕が受け取ったものは、
優しさの感触、
温かいおもてなし、
心に染みる美しさ。

別れの夜、岡崎は僕から一滴の涙を盗んだ。
空の上では、その一滴が川へと変わっていた。